令和4年3月の話

 寒い時期は、水墨画のように色がなかった境内に色が戻ってきました。老木の紅梅にはじまり、墓地にある紅白の梅が満開となり、桜や桃、牡丹などの蕾が膨らんできていて、まもなく私たちの目を楽しませてくれることでしょう。

 日々の暮らしの中で、健康に生活している時や、ものごとが順調に進んでいる時などは、目に見えるものが華やいで見えますが、病気になったり、心配事や悩み事が多くなると、目に見える景色まで色あせて見えてきます。実際には、周りのものの色味が変わっていないのですが、見る者の心ひとつで感じ方が変わってきます。例えば、同じ梅の花を見ても、調子が良い時には、鮮やかな濃いピンクに見えるのに、心配事が有る時には、色褪せたピンクに見えたりしますよね。目に映るものは間違いないものと考えていますが、心の持ち様次第で、見え方・感じ方は全然変わってくるものです。

 日々の暮らしの中で、私たちは様々なものを見たり、聞いたりして、心に刺激を受けています。心地よい刺激を受けると、穏やかな感情を抱き、攻撃的な刺激を受けると、気持ちが粗ぶってきたりします。様々な刺激を制限することはできませんが、心を穏やかに過ごすには、心配事がない状態が必要です。

 人生最大で誰しもが抱えている心配事は、後生の一大事ではないでしょうか。その心配事を丸ごと引き受けてくださるのが、阿弥陀さまです。立派な行いができずとも、間違いなく極楽浄土へ救いとってくださる阿弥陀さまの救いは、私たちの心を穏やかにしてくださいます。後生の一大事で何もかもが終わってしまうのではなく、往きて生まれていく世界があることが、今日の一日を強く明るく生きていく元気へ繋がることです。様々な悩みや心配事を断ち切ることはできませんが、一番大きな悩みをとってもらえただけでも、心がスッと軽くなったように感じますね。

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