令和4年2月の話

 寒さ厳しい中、老木の紅梅が咲き始めました。バス通りからよく見えるこの紅梅は、ご近所の方々も楽しみにして下さっているようで、先日も初めてお会いする方に、「毎年楽しみにしているんですよ」とのお話を伺いました。紅梅が咲いていると、毎年必ずこのような出会いがあります。

 小さくて可愛いこの老木の紅梅は、證誠寺が高輪に拝領地を頂いてすぐに植えられたそうです。正確な年数は不明ですがおよそ三百年以上の樹齢となるようです。ですので、この紅梅のお花は江戸時代の方々も楽しんでおられたのだと思うと、ちょっと不思議ですね。

 梅のお花から見えていた景色はどんな様子だったのでしょうね。十年程前には、鐘楼堂の再建の様子、さらに十年遡ると、鐘撞堂の土台の上に植えてあったタラヨウの木の下で遊ぶ子供達の様子、客殿落慶のお稚児さんの様子、本堂再建の様子、焼失した境内の様子、関東大震災の様子など様々な出来事をみてきたことでしょう。

樹木医さんの話では、上手に手入れをしていけば、まだまだ元気に花を咲かせてくれるそうです。人の寿命は長くても百年を超えることは難しいですが、三百年の歴史の中には様々なことが刻まれているのでしょうね。お寺で紅梅より長い年月見守って下さっているのが、本堂のご本尊様です。

正確な年数は不明ですが、お寺が建立されたとされる鎌倉時代(1221年)から、私たちの證誠寺を見守り続けて下さっております。阿弥陀さまの瞳に映し出された景色は、初代住職が阿弥陀さまを安置した光景にはじまり、代々の住職が毎朝お勤めをする姿を、御門徒の皆さまがお念仏を称える姿を、さまざまな時代におきた出来事など数えきれないことでしょう。これから先も、私たちのお念仏を称える姿をずっと見守って下さることは、なによりも心強いことです。お浄土で再会する懐かしい方々と紅梅の話ができると思うと、紅梅のお花が光輝いて見えることです。

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